パッシングレイン 〜 揺れる心に優しいキスを

◇◇◇

……何だろう、この雰囲気は。

社屋に入って早々感じる、みんなの視線。
すれ違う人みんなが、私をチラッと見てはすぐに視線を外したり、隣の人と密談をしたり。
それまで賑やかだったロッカールームは、私が入った途端、しんと静まり返った。


「……おはようございます」


不審に思いつつ挨拶をしてみれば、一応同じく挨拶を返してくれるけれど、私を遠巻きから眺めるようにする様子に変化は訪れなかった。
それは、自分のデスクに着いても同じで、腫れものに触るように視線を逸らした。


「ちょっと二葉! 何かやらかしたの!?」


そんな中、騒がしく出社してきた琴美が、理解不能なセリフを吐く。
みんなと違って、いつも同様に声を掛けてきてくれたことは嬉しいけれど……どういうこと?


「何かって……何?」

「だから、仕事でミスよ、ミスミス!」

「え……?」


身に覚えのないことを言われて、クエスチョンマーク以外は頭に浮かばない。
琴美が騒ぐようなミスなんて、した覚えはない。

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