パッシングレイン 〜 揺れる心に優しいキスを

「いやいや、その若さで部長だというんだから、私も頭が下がる思いだ」


菊池部長の言葉に、部長はいえいえと手を振って、何度も恐縮そうに頭を下げた。


「それで、今日はこんなところまで、一体どんな?」

「それはですね……」


そこで初めて、私に視線が投げ掛けられた。


「私の元上司なんです」


補足説明をしてみる。


「そうだったのか。相原くんの元からこちらへね」


菊池部長は、感慨深そうに私を見つめた。


「元部下が心配で駆けつけたというところかな? いや、部下思いで何より」

「いや、そういうわけでもないんですけど……」


ハハハと豪快に笑う菊池部長に、相原部長は照れ臭そうに頭を掻いた。

そろそろ帰ってもいいと菊池部長が言ってくれたので、相原部長と一緒に事務所を後にした。

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