パッシングレイン 〜 揺れる心に優しいキスを

お茶をすすりながら、のんびり穏やかに毎日を過ごしていそうに見えて、今の姿からじゃ想像もつかない。
人は見かけによらないとは、このことだ。


「二葉、悪いんだけど、俺はこれから用事があるんだ」


部長が急に立ち止まる。


「……え?」


今夜はこのまま一緒に過ごせるのかと思っていただけに寂しくなる。


「誰かと約束ですか?」

「……社長と会うことになってるんだ」

「社長と……?」


また社長か。
そう言われてしまえば、わがままを通すことも出来ない。


「わかりました」


頷いて、部長の手を放した。
あまり聞き分けのないことを言って、部長を困らせたくはない。


「ごめん」

「いえ、大丈夫です。今夜は琴美とご飯でも食べに行くことにしますね」


笑って手を振った。

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