パッシングレイン 〜 揺れる心に優しいキスを
◇◇◇
「で、私は、相原部長の代理ってわけね」
よくふたりで来るイタリアンレストランで、向かいに座った琴美が口を尖らせた。
部長に言った通り、琴美をつかまえてご飯へと来ていたのだ。
「そういうわけじゃないってば。ほら、琴美には御馳走する約束もしてたでしょう?」
「じゃ、今夜は二葉のおごり?」
「一応ね」
「それなら話は別よ」
急に機嫌を良くした琴美は、メニュー表を楽しそうにめくり始める。
あれでもない、これでもないと、散々迷った挙句に決めると、先に運ばれて来たグレープフルーツジュースに口を付けた。
「池田くんとはその後どうなの?」
琴美の熱烈なプッシュに、そろそろ折れてもいい頃かもしれない。
何せ、琴美の片思いは通算二年にもなる。
「うーん、どうかなぁ。まだ何とも言えないかな」
「告白はしたの?」
「まさか! 絶対に池田くんから言わせてやるんだから」