パッシングレイン 〜 揺れる心に優しいキスを

『社長の娘と結婚するとかしないとか』

「……え?」


社長の娘……?
誰、それ。


『だからね、部長が社長の娘と――』

「どうしてそうなるの?」


もう一度同じことを言いかけた琴美を遮る。


『それがわからないから、二葉にこうして聞いてるんじゃない』


何がなんだか、私にだってわからない。
部長からは、そんなことをひと言も聞いていないのだから。


「……単なる噂なんでしょう?」


鵜呑みになんて出来ない。
誰かが何かを勘違いしてるだけ。
そう思いたかった。


『……そりゃそうだけど、この前部長と一緒に歩いて女性がそうなんじゃないかなって』


言われて、フラッシュバックするふたりの姿。

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