パッシングレイン 〜 揺れる心に優しいキスを
「驚きの人事異動でもあるんですか?」
面白半分にパソコンを覗き込む。
「稲森くんの元上司が」
「相原部長がどうかしたんですか?」
予期せぬ名前の登場に、心臓がドキンと跳ね上がる。
「部長から降格らしい」
――え!? どうして!?
業務改革だって、始まったばかりなのに。
「この会社は何が何なのか、さっぱり分からん。あの相原くんを部長から外すとは。しかも資料室番。宝の持ち腐れじゃないか」
……資料室番?
菊池部長は両手をはの字に広げて上げ、肩を竦めて首を横に振った。
「……何かミスでも?」
「いや、そんな噂は耳に入ってきてはいないがね。とは言っても、ここは陸の孤島だから」
菊池部長が自嘲気味に笑う。
部長が降格……?
どうしてそんなことに?