パッシングレイン 〜 揺れる心に優しいキスを
◇◇◇
何も心配しなくていい。
部長はそう言ったけれど、心配せずにいられるわけもない。
眠っているとき以外は、部長と友里恵さんのことが頭から離れなかった。
琴美の言う、「大丈夫」の根拠だって全然ない。
あれから二週間が経つけれど、部長の処遇に変わりはないし、これから先、変化が起こるような様子だってない。
友里恵さんの気持ちが収まればって、一体いつまで待てばいいの?
そんな日が本当にくるの?
今夜もまた眠れなくて、ベッドの中でモゾモゾと寝返りを打っては起き上がるのを繰り返していたときだった。
ふと、枕元に置いていたスマホが着信を知らせて震えた。
起き上がって見たディスプレイには、見覚えのない番号。
……誰だろう。
首を捻りつつ通話ボタンを押すと、『こんばんは』と、聞き覚えのない女性の声が応答した。
「あの……?」
『倉庫の居心地は?』
倉庫の……居心地?
突飛なことを聞かれて、言葉に詰まる。
どことなく冷たく感じる声のトーン。