パッシングレイン 〜 揺れる心に優しいキスを
――もしかして、友里恵さん?
「どうして私の番号――」
『居心地はどうですかって聞いてるの』
威圧的な言い方に怖気づきそうになる。
言いたいことはたくさんあるのに、何をどう言い返したらいいのか、突然のことに頭がついていかない。
怒りからなのか緊張からなのか、心臓が早鐘を打ち始めた。
「……どうしてですか? どうして相原部長をあんな目に?」
『忠告したでしょう? 相原仁と別れなければ、彼に迷惑がかかるって』
私に何度言わせるつもりなのと、語気を荒げる。
「そんな手を使うなんて、恥ずかしくないんですか?」
やっとできた反論。
電話の向こうから、初めて怯む様子が伝わってきた。
『……そんなことは言っていられないもの』
「え?」
『手段なんて選んでいられないの。好きだから手に入れたい。それのどこがいけないの? それだけ彼のことを愛してるの』