パッシングレイン 〜 揺れる心に優しいキスを
「……はい?」
「私は大のコーヒー党でね」
クシャっと破顔する。
そこまで好きだとは知らなかった。
「すみません、それじゃ、この伝票を処理したら買ってきます」
「ついでに本社へ寄って、私の名刺を注文してくれるかな?」
「――は、はい!」
コーヒーを買ったついでに寄るような場所ではないけれど、これで部長の様子を見て来られる。
嬉しさに顔が綻んだ。
「相原くんにもよろしく伝えてくれ」
心臓がギクリと悲鳴を上げる。
「……はい?」
菊池部長はいたずらっぽく笑って、手元に視線を落とした。
……バレてる?
もしかして、菊池部長に私の行動はお見通し?
……ううん、まさかね。
自分に言い聞かせた。