パッシングレイン 〜 揺れる心に優しいキスを
「そっくりだと思います」
笑いを堪えて真顔で言うと、「よし、今度は俺が二葉を描いてやる」なんて、私から木を奪った。
よかった。
やっと笑ってくれた。
久しぶりに見る部長の笑顔だった。
大きな笑い声も、優しい眼差しも、ちょっとムキになるところも、全部大好き。
部長が砂浜に描いた私の似顔絵は全然似ていないけれど、こうして部長と過ごす他愛もない時間が何よりも愛しくて、何よりも大切だった。
こんな時間が、ずっと続くと勝手に思っていた。
失うことなんて、頭をかすめることさえなかったのに。
人の想いは時に無情だ。
得意気に笑う部長が、どこか儚げに思えて仕方がなかった。