パッシングレイン 〜 揺れる心に優しいキスを
「やだ、あっくん、何言って――」
「このまま放っておけるわけがないだろ」
突然、肩を強く引き寄せられた。
あっくん……?
私を優しく包み込む、あっくんの腕。
勘当を予想していたというのは、単なる強がりだ。
本当は不安で不安で仕方がなくて、つい甘えてしまいそうになる。
でも、それは出来ない。
「あっくん、ダメだよ」
その腕を静かに引き剥がした。
あっくんまで巻き込むことはしたくない。
あっくんの未来は奪いたくない。
「私たちは、兄と妹でしょう? あっくんは、この子の父親にはなれないよ……」
「でも、二葉、」
「本当に大丈夫だから。私ね、この子がいれば、何だって乗り越えられる気がするの」
それは正直な気持ちだった。
不安とは別の次元にある、何かとてつもなく強いパワーを感じる。
簡単にいかないことは承知の上。
まだまだ小さな命なのに、そんなマイナスのことを撥ね退ける力をもらえるのだ。
守るべきものが出来たとき、人は強くなれるのかもしれない。
だからきっと、大丈夫。
強引にあっくんを納得させた。