パッシングレイン 〜 揺れる心に優しいキスを

◇◇◇

「すみません、今終わりますから」


ミーティングの後片付けをしていた会議室。
机を拭いていた手を止めて振り返ると、開けられたドアの先にいたのは相原部長だった。
その姿に、全身に電気が走ったようになる。


「……これから会議ですか?」

「そうなんだ」


抱えていたノートパソコンを机に置くと、部長は大きく息を吐いた。
疲れた様子が気になる。


「あの……大丈夫ですか?」

「え?」

「なんだか疲れてるみたいだったので」


真顔で見つめられて、息を呑んだ。


「……すみません、余計なことですね」


机に置いたタオルを慌てて掴むと、部長に背を向けた。


「片付けも終わったので、失礼しま――」


一歩足を踏み出したところで、不意に部長に掴まれた手首。

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