パッシングレイン 〜 揺れる心に優しいキスを

このままこの場所で、世界が終ってしまえばいいのに。
そうすれば、愛する人とお腹の子、三人で永遠を手に入れられるのに。
刹那的な想いに押しつぶされそうになった。


「二葉、」


部長が何か言いかけたところで、会議室のドアの向こうに人の気配を感じた。
そこでプッツリと途切れた、ふたりだけの最後の時間。
慌てて離れると、開け放たれたドアから数人がガヤガヤと入って来た。


「相原部長、早速始めましょうか」


掛けられた声に「ん、あ……ああ」と曖昧な返事をして、置いてあったノートパソコンを抱えた。

会議室を出る瞬間、交差した視線。

薄っすらと浮かんだ涙に、どうか気づかないで。
そう願いながらも、視線を外すことはできなかった。
私がドアを閉めるまで、部長はただ悲しく私を見つめるばかりだった。


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