パッシングレイン 〜 揺れる心に優しいキスを
◇◇◇
「海二くん、また明日ね」
「ばいばーい」
見送ってくれた保育園の先生に手を振ると、手を繋いで歩き出した。
私のお腹にいた子供も、もう三歳半。
喫茶店にほど近い保育園に預け、昼間は店で働く毎日を過ごしている。
お父さんともお母さんとも、あれから全く会うこともできなくなってしまったけれど、あっくんだけは、たまに私たちに会いに来てくれていた。
時間が解決してくれる。
あっくんはそう言ってくれているけれど、勘当を解いてくれそうな気配は全然なかった。
もしかしたら、このまま一生、ふたりには会えないのかも。
そんなことを考えて、眠れない夜が何度もあった。
でも、いつかは。
きっと、いつかは。
海二の手をぎゅっと握り締めた。
「あ! お兄ちゃんだ!」
海二が前方を指差して、黄色い声を上げた。
店の前で手を上げて微笑む顔。
「ようっ、海二、久しぶりだな」
あっくんは、私の手から離れて駆け寄った海二を軽々と抱き上げる。