パッシングレイン 〜 揺れる心に優しいキスを

仕事は上の空。
チラチラと外ばかり見る私に気づいたマスターが、「彼なら、さっき海のほうに歩いて行くのが見えたよ」と含ませたように笑った。
早く行きなと、手振りで私に伝える。


「マスター……すみません」


エプロンを脱ぎ、マスターに頭を下げる。


「ママ―! どこ行くの?」


店を出ようとすると、海ニが駆け寄ってきた。


「ちょっとここで待っててくれる?」

「いやだー。いっしょにいくー」


私の手を掴んで離さない海ニ。

助けを求めてマスターを見ると、「ふたり一緒に会ってきたほうがいいよ」と言われてしまった。

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