パッシングレイン 〜 揺れる心に優しいキスを
「彼を街で見かけたんだ。隣には女性がいて、当然、それは二葉だろうと見ていたら、全くの別人だった」
……紗枝さんだ。
一度は別れたふたり。
けれど、運命はふたりをまた近づけた。
このままいけば、今度こそ本当に結婚ということになるに違いない。
大きな障害を乗り越えたふたりは、それ以前よりもっと強い絆で結ばれるだろうから。
「思わず、彼を殴ってしまったよ」
「えっ……」
「二葉を泣かせるつもりかって。そこで初めて、彼から本当のことを聞かされたんだ」
このことだったのだ。
この前、あっくんが何かを言いかけてやめたのは、部長のことだったのだ。
ここに私がいることは、あっくんから聞いたんだろう。
「ものすごいショックだったよ」
「ごめんなさい……」
「違うんだ。それを見抜けなかった自分がショックだったんだ」
本当に馬鹿だよな、と呟いてまつ毛を伏せた。
「ひどいことをして、本当にごめんなさい」