パッシングレイン 〜 揺れる心に優しいキスを

部長を傷つけたことに変わりはない。
それしか言葉が出てこなかった。


「そうさせてしまったのは俺なんだから、謝るのは俺のほうだ。……二葉、本当に悪かった。気づいてやれなくてごめん」


優しい瞳に悲しみを滲ませた部長を見て、胸の奥が熱くなる。

部長のためだったと押し付けるつもりはない。
全部自分で決めたことだから。
けれど、やっと想いが報われた気がした。

部長には友里恵さんがいる。
その現実に変わりはない。
今さらどうなるものでもないけれど、心の奥深くに秘めていたものが溶けていく気がした。


「木下にも話したよ。話を聞いて、同じようにショックを受けてた。なんで気づいてあげられなかったんだろうって」


琴美も……?
胸がいっぱいになる。


「これが連絡先だ。あとで電話してやるといい」


部長はそう言って、折りたたまれたメモ用紙を差し出した。

使っていたスマホは解約してしまって、何もかもを白紙にするしかなかった。
全ての繋がりを断ち切るしか、あの時の私にはできなかった。

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