パッシングレイン 〜 揺れる心に優しいキスを
ドキリとした。
『二葉に、俺の仁って名前の“ニ”をあげるよ』
四つ葉のクローバーになりそこないの二葉。
その名前が嫌いだと言った私に、部長がくれた素敵なプレゼント。
これでもう四つの葉だって、抱き締めてくれた。
部長への想いに気づいたこの海。
その“海”と“ニ”は、私にとって、とても大切なもの。
だから、その名前以外には、考えられなかった。
「今までひとりで大変だっただろう」
「……海ニがいてくれたから」
白い大きな貝殻を見つけて、私に手を振る海ニ。
私の代わりに、部長が手を振って返した。
「笑った顔が二葉にそっくりだ」
穏やかな目が私に注がれた。
いつもそうだった。
部長はいつだって、こんな眼差しで見つめてくれたんだ。
懐かしい感覚が甦る。
「四年も待たせて、本当にごめん」