パッシングレイン 〜 揺れる心に優しいキスを
部長との未来を諦めていたというのは、建前に過ぎなかったんだと改めて感じた。
本当は、欲しくて欲しくて仕方のなかったもの。
どこかで期待して、部長の姿を求めて、抱き締めてほしかった。
嬉しさに涙が溢れ出した。
「ママをいじめるな!」
おぼつかない足取りで懸命に走ってきた海ニが、部長の足めがけてパンチを繰り出す。
「わっ、ごめんごめん」
驚いた部長が、宥めようと手を伸ばした。
「海ニ、違うの。ママはいじめられてないのよ」
涙を拭うと、目の前にしゃがみ、海ニの頬を撫でる。
「じゃあ、どうして泣いてるの?」
「それはね、嬉しいからなの」
「嬉しいのに泣くの?」
海ニにはわからないようだった。
不思議そうに目を細めて、私を見つめた。
「海ニくん、一緒に砂の城を作ろうか」
「すなの、しろ?」