パッシングレイン 〜 揺れる心に優しいキスを

「どうしよう。何て呼んだらいいのかな」

「名前でいいんじゃないの?」

「今さら恥ずかしい」


頭の中で呼んでみて、顔が熱くなる。


「ねー、ママ―、のどかわいた」

「あ、そうだよね。何飲みたい?」

「みかん!」


尋ねた私に即答する。


「海二くんはみかんジュースが好きなの?」

「うん! あとは車!」


ブーンと言いながら、テーブルにミニカーを走らせた。


「相原さんも、すっかりパパの顔だよね」


ひとりで遊ぶ海二をニコニコしながら見つつ、琴美が呟く。


「会ったの?」

「あ……うん、ちょっとね。二葉の様子を聞きたくて」


ハッとしたように私を見て、宙に視線を彷徨わせる。

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