パッシングレイン 〜 揺れる心に優しいキスを

◇◇◇

「ただいま!」


マンションへ帰るなり、海二は部長の姿を探して部屋中のドアを開け放って行く。
そして、そのひとつの部屋に父親の姿を見つけて、後ろから飛びついた。


「おかえり」


部長が海二を抱き上げる。
海二は嬉しそうに、足をばたつかせて部長に甘えた。

そんな光景を見るだけで心が満たされてしまう。
遠巻きに眺める私に気づいた部長は、「おいで」と私を呼び寄せた。


「おかえり、二葉」

「ただいま」


海二を片手に抱き、もう片方の腕で私を引き寄せる。

ここで暮らし始めて、一週間。
なんとなく、まだ気恥ずかしい部分がある。


「楽しかったか?」


俯いた私の頭に、部長の優しい声が降ってくる。

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