パッシングレイン 〜 揺れる心に優しいキスを

◇◇◇

ウエディングドレスの下見のために琴美と待ち合わせをしたのは、都心にある大きな高級ホテルだった。
広いエントランスに煌びやかな照明。
今まで一度も足を踏み入れたことがなくて、つい挙動不審になる。

確か、フロント近くのラウンジだって言っていたような……。

その姿を探してラウンジらしきところへ近づくと、うしろから「二葉!」と私を呼ぶ声が聞こえた。
振り返ると、琴美が大きく手を振りながら小走りに来るところだった。


「お待たせ」


肩を弾ませる。


「私も今着いたところだよ」

「よかった。それじゃ、早速行こうか」


琴美のあとについていく。
エレベーターで十二階まで上昇。
絨毯の敷き詰められた通路を突きあたりまで進み、一番奥の部屋へと入った。


「木下です」


すぐそばにいた女性スタッフに声を掛けると、そのさらに奥へとふたり揃って案内された。

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