パッシングレイン 〜 揺れる心に優しいキスを
去年の私の誕生日は、あっくんの出張。
その前はあっくんの残業。
二年連続で一緒に過ごせなかった。
そのときの寂しさも思い出したことで余計に嬉しくて、テンションはマックスにのぼり詰める。
けれど、それも束の間。
次にあっくんの口から出たひと言に、嬉しい気持ちは急降下してしまった。
「兄として当然だ」
――兄として、か。
あっくんは、そう言いながら私の頭にポンと手を置いた。
全身から一気に力が抜けていく。
母の連れ子だったあっくんと、父の連れ子だった私。
その出会いは、私が中学生の時だった。
ちょうど異性を意識し出す頃だ。
子供っぽい短髪の同級生ばかりを見ていた私には、あっくんのツーブロックのショートヘアは衝撃的だったし、少し切れ長のきりっとした目は男らしさに溢れていた。
何よりも、クールに見えながら時折見せる優しい笑顔は、一瞬で私の心を奪ってしまった。
三つ年上のあっくんは、私から見たら大人で優しくて知的。
同級生なんて男じゃない。
誰もが霞んでしまうほどだった。
そして、それが恋に変わるのに、それほどの時間はかからなかった。