パッシングレイン 〜 揺れる心に優しいキスを

「……え?」


思いもよらない紗枝さんのひと言。
洗う手を止めて、紗枝さんが私を真っ直ぐ見つめた。


「二葉ちゃんたちって、血の繋がりはないのよね」

「……はい」


何を言われるのか、小さな恐怖に心臓がトクンと音を立てる。


「篤哉に恋愛感情、持ったこととか……ないの?」

「え……」

「だって、本当の兄妹じゃないんだし。一番身近な異性でしょう?」


私の心の奥深くを探るように、紗枝さんが静かに見つめる。
最も聞かれたくないことだった。

どう答えるのが正解か、頭の中ではよく分かっていた。
でも、もしもここで「ある」と答えたら、紗枝さんはどうするだろう。
あっくんと紗枝さんはどうなるだろう。

ふたりの関係を壊せる?
そんな邪心が頭をもたげる。
言ってみたい衝動に駆られる。

けれど……。

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