パッシングレイン 〜 揺れる心に優しいキスを
その荷物ばかりはどこに片付ければいいのか分からなくて、仕方なくテーブルの上に畳んで置いた。
そして、段ボールの山を崩し終えても部長はまだ帰らなくて、ソファにひとり座ってぼんやりと過ごす。
部長はきっと、彼女との未来を夢見てたんだろうな。
目の前に置いたエプロンが目に入って、ふとそんなことを思った。
本社に戻ったら、プロポーズなんてことも考えていたかもしれない。
そう思うと、部長が不憫だった。
でも私には、そんな夢を見ることさえ許されない。
あっくんとの未来は、絶対にないものだから。
あるのは、永遠に続く兄と妹という関係だけなのだ。
考えの末に辿り着く結末は、何度だって私の胸を締め付けた。