パッシングレイン 〜 揺れる心に優しいキスを
◇◇◇
「おい、こんなところで寝てたら風邪ひくぞ」
肩先を揺さぶられて、ゆっくり目を開けた。
いつの間にか眠っていたらしい。
「……今、帰ったんですか?」
慌てて身体を起こした。
「ああ」
「おかえりなさい」
「ただいま。それにしても、稲森は本当によく寝るな」
部長がクスクスと笑い出す。
「……すみません」
頬に赤い痕を残して眠っていた歓迎会の夜を思い出して、顔が熱くなる。
これでは、本当に部長の言う通りだ。
子供じゃないんだから。
「あの、荷物の片付けは一応終わりました」
話の矛先を変えたくて、ちょっとした手柄を披露してみる。