パッシングレイン 〜 揺れる心に優しいキスを
別れてまだ二週間。
心の整理がつかないのは当然だ。
そんな姿が自分と重なって、思わず部長に抱き付いた。
「無理、しないでください」
「……稲森」
大好きだった人を、そう簡単に忘れられるはずなんてない。
どうしてあげるのがいいのか分からなくて、ただ、部長の想いをこうして抱き締めてあげたかった。
同じ痛みを抱えた部長の心を包み込んであげたかった。
傷の舐め合い。
そうなのかもしれない。
でも、そうでもしないといられなかった。
それが、私たちが付き合うことになった理由でもあるのだから。
「随分と身体が冷え切ってるんじゃないか?」
部長が私をそっと引き離す。
「ほら、指先だって、こんなに冷たくして」
手を取ってそっと握り締めると、今度は私の頬を両手で包み込んだ。
「ここだって、冷えてる」