パッシングレイン 〜 揺れる心に優しいキスを

キーホルダーを指差して、部長が顔を覗き込む。

“二葉”は、ハートの形。
そんなこと、思ってみたこともなかった。


「……ほんとですね」

「まだ納得がいってないって顔だな」


そういうわけではないけれど。
部長は腕を組んで、今度は何かを考えるポーズを取る。


「よし、それじゃ、俺の名前をあげるから」


名前を……?
言ってることの意味が分からなくて首を傾げる。


「稲森に、俺の名前“仁”の“二”をあげるよ」


それでもやっぱり分からなくて、部長をまじまじと見つめた。


「そうすれば、“二葉”は四枚の葉になるだろう?」


部長は、穏やかな眼差しで見つめ返してくれた。

“二”枚の葉を、くれる?
合わせて四枚。
四つ葉のクローバー。

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