パッシングレイン 〜 揺れる心に優しいキスを

⑦不意打ちの対面



「二葉ちゃん、本当にひとりで大丈夫?」

「うん。寝ていれば、すぐに良くなるから。心配しないで仕事に行って?」


心配そうに顔を覗き込むお母さんに、ベッドの中から手を振る。

ただの風邪。
こうして温かくして横になっていれば、明日には良くなってる。


「それじゃ、何かあったら連絡するのよ? 分かった?」


何度も念押しするお母さんに、もう一度軽く手を振って目を閉じた。
熱のせいか、飲んだ薬のせいか、強烈な眠気にあっという間にさらわれた。

どのくらい眠っていたのか、来客を告げるチャイムの音で目を開ける。
レースのカーテンから差し込む光の角度からすると、午後もいい時間なのかもしれない。

まだ少し寒気のする身体。
訪ねて来た人には申し訳ないけれど、このまま居留守を使おう。
もう一度鳴らされたチャイムも無視していると、今度はベッド脇に置いていたスマホが鳴り始めた。

……お母さんかな。

手探りで手繰り寄せ、相手も確かめずに指をスライドさせた。


「……はい」

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