パッシングレイン 〜 揺れる心に優しいキスを
『具合はどうだ?』
一瞬誰なのか分からなくて、スマホを耳から離してディスプレイを見る。
――えっ。
「部長!?」
その名前に、思わず飛び起きた。
『そんなに驚くこともないだろ』
「あ、はい……そうですね」
『起きられるか?』
不安そうに問いかける。
「え? あ、はい、起きられますけど……?」
『実は今、家の前にいるんだ』
「はい!?」
家の前って……この家の前ってこと!?
それじゃ、さっきのチャイム、部長が鳴らしたの!?
寒気も熱も一気に吹き飛ぶ思いがした。
でも、唐突すぎる。
「無理です、部長。私、パジャマだし、スッピンだし……」
『そんなこと、俺は気にしない』