パッシングレイン 〜 揺れる心に優しいキスを
部長が気にしなくても、私が気にするのだ。
さすがにそんな姿をさらせない。
「それに、風邪うつしちゃったら困ります」
『俺、身体は丈夫なほうなんだ。だから心配いらない』
いや、言いたいことは、そういうことじゃなくて……。
起き抜けの格好で会えないという乙女心が、部長にはなかなか通じない。
何度か押し問答を繰り返して、まんまと押し切られてしまった。
さすがにここまで来てもらったというのに、そのまま追い返すわけにもいかないという申し訳なさも手伝った。
髪の毛にブラッシングして、リップを塗る。
それくらいでどうこうなるものでもないけれど、意を決して玄関を開けた。
「寝てるところ、悪かったな」
強引に開けさせたわりには、眉を下げて心配顔を向ける。
そんな様子が何だかおかしくて、「とりあえず入ってください」と笑いを堪えて、部長を招き入れた。
とはいっても、自分の部屋に通すわけにもいかない。
とりあえず、リビングのソファへと座ってもらった。
「今、お茶でも」