パッシングレイン 〜 揺れる心に優しいキスを

「わ……」


あまりにも大きな箱に目を見張る。


「ケーキ、嫌いか?」

「あ、いえ、大好きです。ありがとうございます」


一体、いくつ買ってきてくれたんだろう。
両手で抱えてもずっしりとする箱だった。


「何が好みなのか分からないから、ショーケースに並んでるやつをひと通り買って来た」


部長は照れ臭そうに鼻の下をこすった。

なんか、部長らしい。
何でも出来そうなのに、片付けが大の苦手だったり、スマートに振る舞うかと思ったら、ちょっと不器用。

クスッと漏れた笑みに、「何か不満か?」と部長が軽く睨む。


「いえ、すごく嬉しいです」

「誕生日おめでとう、二葉」

「ありがとうございます」


言うと同時に抱き寄せられた。


「部長! 風邪がうつっちゃいますから!」

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