双姫 Ⅲ

翠の過去



翠side


物心ついた頃から俺と類の両親は、
いつもいつも下らない事で揉めてた。


「ねぇ、なんで!?なんでなのよ!!」


「うるせぇ!文句があんなら出て行け!!」


小さかった俺にはどうする事も出来なかった。

初めは何回も「止めて、喧嘩しないで!」と、
訴えていたがそれが気に食わないのか
暴力を振るわれる事があった。


痛かった…苦しかった……。


今の俺なら容易くあしらうが、
あの頃の俺は何も出来ない只のガキだった。

俺より小さい弟を抱え、
言い争う両親をどこか他人のように見詰める。


「また始まったな……。
大丈夫だ、お前は俺が守ってやるから。」


ギャーギャーと外にまで聞こえそうな音量。
標的にならないように押し入れに入る。


「恥ずかしいな…悲しいなぁ……。」


なんで…俺達の親がコイツらだったんだろう。

もっと優しくて、笑って、一緒に手を繋いで。


望んだのはそれだけだ。


< 126 / 520 >

この作品をシェア

pagetop