双姫 Ⅲ
別に、優しかった事が無い訳じゃない。
「昔は良かったのに…。」
何が原因で、どうしてこうなったのか。
「……それが分かって解決するなら、
俺はとっくに笑ってるだろーな。」
もう笑い方も喜び方も忘れてしまった。
家に帰ると玄関の前で聞き耳をたてる。
「あれ…?」
いつもなら騒がしいのにそれがない。
俺にとっては日常になっていたからなのか、
逆にそれが怖かったのを覚えてる。
ガチャ…
「ただいま…。」
聞えない位の声で中に入り、
恐る恐る弟の元へ向かった。
でも、
「あれ?どこ行ったんだ…??」
まだ赤ん坊だった類は居なかった。