双姫 Ⅲ
家中探し回っても見付からなくて、
一人で焦っていたら
「何を騒いでる。」
冷たい声で問う父親。
「え……あ、その…。」
まともに話した事がなかったから
酷く緊張して上手く声が出ない。
「アイツなら出てったぞ。」
「え……?」
出てった?誰が……??
「お前は俺が引き取る事になった。」
嫌そうに話し続ける父親を、
なんの感情を持たない目で見詰める。
母親は赤ん坊の類を連れて出て行った。
その現実を淡々と話す目の前の父親が
何故か可哀想に見えたのは、
俺が…
俺の心が壊れてしまったから。
キシキシと音をたてて、
幸せだった光景がガラスのように砕け散った。