双姫 Ⅲ


私は蒼月を連れて、的場家から出た。


的場さんが門まで見送ってくれ、
お辞儀だけ返して歩き出す。

家に帰る気分じゃなかったから
適当に散歩する事にした。


『…。』


「…。」


珍しく蒼月が喋らない。

私と同じで分からなくなったんだろう。


「グズ……ッ……。」


『泣かないの。』


ポロポロと涙を蒼月を見ていたら
私までつられて涙が出た。

これも双子だからかな?
感情を共有するって聞いた事がある。


手を繋いで歩く。
昔からこうする事で安心出来たんだ。


でも、


「お前ら樺沢の娘だな。」


その安心は大勢の男達によって奪われた。


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