双姫 Ⅲ
あれ……この場面この前にも?
なんて事を暢気に思っていて、
身体が一瞬だけ動かなくなって避けられない。
「朱羽ッ!!」
グイッ!!
蓮斗に腕を引っ張られ、
スレスレでバイクとの接触を避ける。
『……ハァ…ハァ……ハァ…ッ!!』
「大丈夫だ…大丈夫だから深呼吸しろ。」
危機を回避出来た事で、
心臓がうるさい位に脈打つ。
し、死ぬかと思った……。
「おねぇちゃん!」
「蓮斗、ナイス反射神経!!」
「……チッ!あのバイク、ナンバー隠してやがる!」
もう既にバイクの姿は見えない。
『やっぱり…そう、なの?』
「おねぇちゃん…?
どうしたの??どっか痛いのぉ!?」
ポタポタと涙がこぼれ落ちる。
『碧ッ!!』
バイクを避ける瞬間、
近くの電柱の影でこっちを無表情で観察する
碧の姿をはっきり捉えてしまった。