双姫 Ⅲ
「はい!これで良し!!
でも、病院に連れてくからね!?」
「ありがと、でも病院は行きたくない。」
綺麗に巻かれた包帯を見て、
少し顔をしかめるお母さん。
『痛い…?』
「ちょっとね。」
ちょっとな筈がない。
床には血が落ちててどれ程の傷なのか分かる。
「もしかしたら縫うかもね。」
「え゛!?」
「血管は切れてないけど深いからねぇ〜…。」
「そ、それは勘弁……。」
お母さんは病院が嫌いだ。
風邪ひいた時に幾ら行こうと言っても
首を縦に振らなかった事が記憶にある。
それでもお父さんが無理矢理連れて行ったけど。
「冗談♪安静にしてれば治るよ!
まだ、病院恐怖症なんだね(笑)」
「タチ悪いなぁ。
あれだけ入院したら嫌いにもなるって。」
『入院……?』
その言葉にまた不安が過(よ)ぎる。
「……これも後で話すわ。
色々、複雑になってて少し整理させてね。」
でも、
頭を撫でられたらそんな不安はどこかに消えた。