初恋は叶わない
「わかるよ?わかるけど。
見てるこっちまで暑苦しいっていうか」

「暑苦しいって…。
でも、珍しいよね?
男子ってみぃんな、浴衣の女子が好きなんだと思ってたけど。
違うんだ?」


意外な答えについ声が大きくなると、冷たい目で睨んでくる。


「どうだろ?
別に嫌いじゃないけど。
着てる人にもよるだろうし」

「それって、すっごく引っかかるんだけど?」

「いや、そういう意味じゃなくって。
心配すんな!全っ然、似合ってるから!」

そういう意味って、どういう意味なの?

着てるのが私で悪かったわね。

そんな焦って、「似合ってる。」とか言われても、

全然嬉しくないから!

形勢逆転して、今度は私が早川を睨みつける。

だけど、向こうは全然悪びれる様子もなく、


「俺的にはちょっと得した気分」


だって。


「な、何よ、急に」


そんな爽やかスマイルしたって騙されないからね。

それもわざとじゃないから、余計に性質が悪い。

これだからカッコイイ男って嫌いなんだ。

なんでか、

段々こっちが悪いような気さえしてくるから不思議。

そのうえ、またまた思わせぶりだし。


「花火よりよっぽど珍しいもん見れたからさ。
最初、七五三かと思った。」

「はあ?」


七五三って!?

一瞬でも照れた自分が悔しい。


「もうっ!最悪っ!バカ!」


怒りをぶつける私を、軽くあしらうように、


「冗談だって、冗談。
もうちょい歩いたら、乗っけてやるから、な?
頑張れよ」


今度は優しい言葉をかけてくる。

もう完全に遊ばれてるとしか思えない。

そうやって、子供をあやすみたいに言われたら、

黙って頷くしかないじゃない。
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