初恋は叶わない
「あのさ、あんま気にすんなよ。
それに、お前がいつもの調子に戻ってくれないと、
こっちもなんか、つまんないっつーかさ」

「あ!それちょっとわかる!」

「へぇ~」


反射的に口から出た答えに、意外って顔してる早川。

だけどなんか嬉しそうで。

そんな些細な意見の一致に、こっちも嬉しくなる。


「なんか早川と話してると元気になるっていうか。
なんでだろ?
負けたくないって思って、頑張っちゃうからかな」

「なんだそれ?なんでそこで勝ち負けが出てくんだ?」

「いっつも負けず嫌いなの、そっちじゃん!」

「そうだよ。オレは負けず嫌いなんだ、何事においても」


ふいに立ち止まって、意味ありげに向けられた視線に、

つられて足が止まる。


「負ける気ないから、オレ」

まっすぐな強い瞳に捉えられ、一瞬、

ドクンと心臓の鼓動が聞こえた気がした。

そのままぼーっとする私を置き去りにして、

早川はまた歩き始める。


「私だって!」


我に返った私は、追いかけるように、背中に言い返すけれど。


「はいはい」


って笑って答える早川とのやり取りが、

何かどこか、チグハグな気がしていた。

だけど、その時はまだ、一体それが何なのか、

わざわざ突き止めようとすることもしなかった。

ただバカみたいに騒いだり、話したり、

笑ったりしていられたら、それでよかったから。
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