初恋は叶わない
「あんな、お前らしくないの…。
このまま帰ったって、眠れるわけないって」


早川が感情的になるなんて、珍しいんじゃないかな。



それだけ本気で心配してくれてるってことなんだと思うと、

なんだか申し訳ない気持ちになる。

だけど、怒りたいのか、泣きたいのか、

それさえもわからない自分。

『気がついたら、あんな言い方になっていた』としか、

今は言えない。



ちゃんと浴衣着て、髪もアップにして、

あんなに嬉しそうにはしゃいでるレイナさんのこと、

修ちゃんが見たらどう思うだろう?

彼女を笑顔にしたいって願ってる修ちゃんが、

あんなの見せつけられたら、

きっとすごく傷つく。



そう思ったら、レイナさんのしてることって、

なんて残酷なんだろうって、許せなくて。

人の気持ちなんて、誰かが何か言ったからって、

どうにかなるものではないとわかっていても、

本人を目の前にして、言わずにはいられなかった。

思い出すだけで、胸が苦しくて、

後から後から滲んでくる涙を、

流れ落ちる前に、何度も手の甲で拭った。
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