初恋は叶わない
「おい、…もしかして泣いてる?」


おずおずと声をかける早川の声が、
少し上ずっている。


「ちょっ、俺、そんなつもり、」


自分がさっき怒ったせいだと思ってるのかな。

珍しいくらい動揺しまくりで、

おろおろして。

別に早川は悪くないのに、

ちょっとかわいそうなくらい。


「ごめん!
言い過ぎた。
頼むから泣くなよ、な?」


俯く私の前で、腰をかがめて手まで合わせてる。


「もういいからさ。
言いたくないなら、もう聞かないから」


きっと、

私の涙の理由を測りかねているんだろう。

それでも、触れてはいけないところに、

触れてしまったことには、気付いてる。

だからもうこれ以上、

踏み込まないって言ってるんだ。

それはたぶん、彼なりの優しさでもあって。

なのに、どうしてかな?

急に突き放されたような気持ちになるなんて。

まだ気持ちが整理できないでいる私に、


「もう、帰ろう。
家まで送る」


とだけ言って、早川は自転車に手をかけ、

私はほとんど反射的に、そのハンドルを掴んでいた。
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