初恋は叶わない
「はい、到着ー!」


いきなりキュっと鳴るブレーキ音。

と同時に、早川の背中に頭をぶつけて、

街灯に照らされた辺りを見渡す。


「ここって?」


わがままを言った私のために、

少し遠回りして帰るだけなのかと思ってたのに。

着いたのは、

私が貧血で倒れて迷惑かけた時、

運んでもらった公園。

「こういうとき、
ホントは海とか行きたいとこだけどなー!」


自転車を降りたと思ったら、

あっという間によじ登ったジャングルジムの上から、

私に向って大声で叫ぶ。

自分だけ気持ちよさそうに、手を振って。

悔しくなった私は、無茶を承知で、

下駄を履いたまま、ジャングルジムに片足をかけた。

鼻緒ずれした所が、ピリピリと痛んで、

思わず顔を顰める。


「お前は無理だって」

「やってみなきゃわかんないでしょ。
自分だけズルイよ!」


どこまでも我儘になっていく自分に、

内心ちょっと驚いていた。

どこまで甘えていいのか、試すみたいに、

どんどん言いたい放題、言ってみたくなる。


「無茶すんなよな」


って、言いながら、不自由そうな私の腕を、

引っ張り上げてくれるのだって、

期待していなかったと言えばウソだし。
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