初恋は叶わない
誰もいない夜の公園は、

当たり前なんだけど、ホントに静かで。

改造バイクのけたたましい音が、

思い出したように通り過ぎていく。

私は何も言えなくて、

早川はあえて何も言わない。

話し出すのを待ってくれてるんだと思った。

この沈黙は私のためなんだ。


「ずーっとこんなとこに座ってるつもりかよ?」


なかなか決心がつかない私を、ふざけて非難しながら、

きっかけをくれようとしてるってことも、

ちゃんとわかってる、伝わってるのに。


「なんか言いたいことあるのかと思ったんだけど?」


って言われても、


「言いたいこと?」


聞き返すしかできなくて。


「ない?」


学校じゃ聞いたことないような、

そんな優しい声で聞くのはズルイ。

ホントはここから大きな声で叫んでしまいたい。

胸につかえているものを、全部吐き出して、

スッキリしてしまいたい。

何度もそう思ったけど、


ずっと心のどこかで、

そうしちゃいけない気がしてた。


「話しにくいとは思うけど」


興味本位なんかじゃなく、

躊躇している私の事情まで、考えてくれてるんだ。

それなのに、これ以上、とぼけたり、

はぐらかしたりしたら、

すごく失礼な気がしてきて。

「話しにくいよ。
ってか、私が勝手に話しちゃダメでしょ?
当事者ならまだしも、どっちかっていうと、
部外者なのに」


心の中の葛藤をそのまま、

素直に言葉にしてみて、

今さらだけどはっとした。

これじゃあまるで、

ホントは聞いてほしいって、

言ってるみたいに聞こえる。


『しかも、どうしてよりによって、
早川なんだろう?』


一気に恥ずかしさが全身を駆け巡る。
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