初恋は叶わない
「よーし、しっかり掴まれよ!」
明らかに態度のおかしい私に、
あえて何も聞いてはこないまま、
早川は自転車をスタートさせた。
それはきっと、優しさなんだって、
頭では理解できるのに、心が着いていかない。
そっとしておいてくれているのに、
放って置かれたような気になるなんて、
ほんとに、私、どうかしてる。
「こないだ、海で、ちょっと話したんだけどさー」
って、ゆっくりとペダルをこぎながら、
半分だけ振り返った早川は、いつもの調子で。
ちゃんと聞こえてるのかを気にして、
私の相槌を待ってる。
仕方ないから、
「何を?」
って、私も少し大きな声で返す。
「修一さん、はじめ、俺のこと信用できないって感じで、
いろいろ聞いてきてさ。
『かりんと付き合ってるのか?』って聞いてきた時なんか、
こんな目の前に顔近づけられて」
早川はそう言うと、自分の目の前に右手をかざして、
おどけて見せた。
「一瞬、お前の親父さんと話してるのかと思うくらい、
あれはマジでビビった。
それが、『付き合ってない。』って言ったら、急に優しくなって。
わかりやすいよなー。
もう、心配でたまんないって顔してんの。
あれ、絶対、シスコンだって!」
「シスコン!?」
思い出し笑いしながら話す早川につられて、
つい私も笑ってしまった。
きっと早川は、私を元気づけようとして、
この話をしてくれたんだろう。
そう思ったら、ついさっきまで感じてた胸の痛みが、
すーっと溶けてなくなった。
運転しにくそうにしながら、
何度も振り返って、話してくれる。
そこには彼らしい優しさが溢れていた。
さりげなく私を包んで、癒してくれる。
もう何度となく感じているこの感覚に、
ほっとした私は、ちょっと鼻の奥がツンとして、
泣いてしまいそうになった。
どんな理由であれ、気遣ってくれる人がいるってことの
ありがたさが染みていく。
明らかに態度のおかしい私に、
あえて何も聞いてはこないまま、
早川は自転車をスタートさせた。
それはきっと、優しさなんだって、
頭では理解できるのに、心が着いていかない。
そっとしておいてくれているのに、
放って置かれたような気になるなんて、
ほんとに、私、どうかしてる。
「こないだ、海で、ちょっと話したんだけどさー」
って、ゆっくりとペダルをこぎながら、
半分だけ振り返った早川は、いつもの調子で。
ちゃんと聞こえてるのかを気にして、
私の相槌を待ってる。
仕方ないから、
「何を?」
って、私も少し大きな声で返す。
「修一さん、はじめ、俺のこと信用できないって感じで、
いろいろ聞いてきてさ。
『かりんと付き合ってるのか?』って聞いてきた時なんか、
こんな目の前に顔近づけられて」
早川はそう言うと、自分の目の前に右手をかざして、
おどけて見せた。
「一瞬、お前の親父さんと話してるのかと思うくらい、
あれはマジでビビった。
それが、『付き合ってない。』って言ったら、急に優しくなって。
わかりやすいよなー。
もう、心配でたまんないって顔してんの。
あれ、絶対、シスコンだって!」
「シスコン!?」
思い出し笑いしながら話す早川につられて、
つい私も笑ってしまった。
きっと早川は、私を元気づけようとして、
この話をしてくれたんだろう。
そう思ったら、ついさっきまで感じてた胸の痛みが、
すーっと溶けてなくなった。
運転しにくそうにしながら、
何度も振り返って、話してくれる。
そこには彼らしい優しさが溢れていた。
さりげなく私を包んで、癒してくれる。
もう何度となく感じているこの感覚に、
ほっとした私は、ちょっと鼻の奥がツンとして、
泣いてしまいそうになった。
どんな理由であれ、気遣ってくれる人がいるってことの
ありがたさが染みていく。