初恋は叶わない
「先、シャワー浴びてくる」


いたたまれなくてバスルームに逃げ込んだのはいいけど、

なかなかほどけない帯に悪戦苦闘。

ふいに、背後に人の気配を感じて振り返ると、


「さっさと脱ぎなさい」


って、帯ごとお母さんに引っ張られてよろめいた。


「ありがと」


両足踏ん張りながらつぶやく。


「携帯の充電くらい確認しときなさい。
今に始まったことじゃないけど、
お姉ちゃんと違ってかりんは、
ドジっていうか、要領悪いっていうか…。
ちょっとは成長してちょうだい」

呆れたようなお母さんのその声に

ちょっとほっとする。



「ま、そこがかりんらしいんだけどね。
だから、まだまだ心配っていうか」

「ごめんなさい」



ガミガミお説教してくれた方が、まだよかったかも。

優しく言われると、逆になんかすごい罪悪感がクル。

床に落ちた浴衣を片付けながら、

お母さんの背中は、まだ何か言いたそう。

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