初恋は叶わない
「は?」


やっぱ聞こえなかったか…。


「うるさいなんて言ってないし。

ただ、お前が無理にさ…」


言いかけて、言葉を探しているように、

視線をさまよわせる。

しばらく考えて、早川は言った。


「なんかいつもと違うから、調子くるうっつーか…

普段通りでいいじゃん」


「わかった」


もう早くこの話題は終わらせたかったから、

とりあえずそう言って、うつむいた。

ホントは全っ然わかんないんですけど。

普段通りって何?

ふと横を見たら、肘をついた姿勢で、

ぼんやり窓の外を見てる。

いつものポーズだ。


(確かにあんたは同じだわ)


しかも、授業なんて聞いてない時のヤツだ。

私の話の方が、無視できない分厄介ってか?

なんて考えてる間も、ずーっと横顔を見ていたら。

あれ?なんか違和感―――。

そっか。左右が逆なんだ。

だから、どことなく見慣れない横顔。

いつも教室で、

アタシは左側から早川の横顔を見てるんだ。

ふと、さっきの言葉が頭をよぎる。


「普段通りでいいじゃん」


普段通りですけど?何か問題でも?

どんどん自分一人の思考の中に沈んでいこうとしていた私を、

思わぬ彼の一言が引き戻す。


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