初恋は叶わない
小さい頃から修兄にからかわれてた。

「かりんは手も足も体もみぃんな細くて、

 モヤシみたいだな。

 夏だってのに、真っ白いしさぁ」

自分の黒く焼けたたくましい腕を私の横に並べて、

スゴイだろって、よく自慢してたな。

「いいもん、どうせモヤシだから」

拗ねてパラソルを飛び出すと、

「さぁ、今日は泳ぐぞ!

 せっかく来たんだもんね。楽しまなくっちゃ」

「よし、行くか」

疲れるまで泳ぎまくって、死んだように眠って、

そしたら、

今日のこのイヤな気持ちを忘れられるんじゃないかって。

胸の中でグルグル渦を巻いている、

自分でも持て余してしまっているこの感情。

早川には悪いけど、とことんつき合ってもらうからね。

頭の中空っぽになるまで、泳ぎまくってやるんだ!

なんて、付き合ってもらう相手が悪すぎた。

「ねぇ、そろそろ上がりたいんだけど」

「えぇ~っ。もうバテたのか?」

「だってもう体がふやけるよ~」

サッカー部の底なしの体力に、
毎日家と学校の往復しかしてない私が敵うわけがない。

いい加減にしとかないと、

ホントに沈んでしまいそう。
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