初恋は叶わない
エアコンが効いた車内は快適で、

私は早川の肩にもたれたまま、

本気でうとうとし始めていた。

だって、誰も何もしゃべらないんだもん。

早川の自己紹介の途中から、いや、その前からかな、

とにかく車の中の空気はビミョー過ぎて。

それは誰も迂闊に口を開けないような、

重苦しい雰囲気だった。

しばらく続いた沈黙を破ったのは、レイナさんだ。

「自己紹介まだだったね!

佐伯レイナです。

えっと、一応20歳になりました、大学二回生です。

よろしく」

「よろしくお願いします」

早川が頭を下げた勢いで、滑り落ちかけた私は、

ようやく、目覚めることを許される。

しらじらしく伸びをしていると、

ミラー越しに修ちゃんに睨まれた。
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