初恋は叶わない
ホントに長い一日だったなぁ・・・。

もうちょっとお湯につかってぼーっとしていたいけど。


「かりん?起きてるのー?寝ちゃダメよー!」


バスルームまでお母さんの声が響いてくる。


「はーい!」


仕方ない、あがるとするか。

お姉ちゃんにバレたらウルサイから、

借りたワンピースを脱衣カゴの一番底に隠すと、

さっさとリビングを横切る。

と、


「かりん!」


「?」


呼び止められて仕方なく振り返ると、

リビングのソファにみかが座っていた。


「来ちゃった!」


かわいく舌を出すしぐさにも、全然笑えない。

だって、いつもとーとつ過ぎなんだもん。


「何回メールしても全然返信ないし、

こりゃ、来た方が早いか!ってなって」

「うそ、ゴメン!」


バッグの中に入れっ放しになっていたケータイを、

手さぐりで取り出した。

うわ、なんか点滅してる。

未読メールも、着信履歴も全てみかから。


「はぁ~」


思わず大きなため息が出た。

はっきりいって完全に忘れていた。

もう一人いたんだったよ、うるさいのが。

この追及をどうやって逃れるか、

ある程度作戦を練る時間がほしいけど。

私の部屋で二人、

ペタペタとローションで焼けたお肌をケアしつつ、

鏡越しのみかの視線が痛い。
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